神戸家庭裁判所 昭和32年(家イ)76号 審判 1957年8月09日
申立人 田村みよ(仮名)
相手方 田村信二(仮名)
主文
申立人と相手方とを離婚する。
申立人と相手方との長男勝の親権者を相手方と定める。
本件申立に関する費用は双方自弁とする。
理由
相手方の戸籍謄本の記載及び当庁調査官の調査報告の結果によると、次の事実を認定することができる。
一、申立人と相手方とは昭和二十年○月○○日挙式の上結婚しその間に長男勝(昭和二十一年○月○○日生)をもうけたので翌二十一年○月○○日に婚姻の届出と同時に勝の嫡出子出生届を済ませたものである。
二、婚姻後相手方は、その家業である青果業を経営していたが、かねて窃盗の前歴を有していたところ、不図したことから再び窃盗の罪を重ね昭和二十一年○月頃から服役するに至つた。
三、ところで申立人は相手方の服役後も相手方家族と同居してきたがその家族との折り合いがだんだんと悪くなつてきたので遂に翌二十二年に長男勝を連れていつたん実家に帰り、その後事情あつて勝を実家に置き単身○○市に移住し相手方と事実上離婚した状態のままで現在に至つたもので、離別状態も十年余になるし相手方の過去の経歴からみて今後同人との円満な婚姻関係を継続できるとは考えられないところから離婚を強く希望している。
四、相手方はその後再び罪を犯し現に○○刑務所に収監中であるし、相手方との婚姻歴は約十年になるけれども夫帰として実際に同居したのは僅かに一年足らずであるから、申立人が望むなら離婚することに異存なく、ただ長男勝の親権者を相手方に定めることを強く希望している。なお勝の親権者については申立人自身相手方の父親としての責任感を喚起する点から考えてこれを相手方に定めることに賛成している。
ところで相手方は現在刑務所に在監中であり、申立人は申立書によつて明かなとおり現在○○市に居住しており費用の関係で当庁への出頭が不可能な状態にあるため、調停委員会において調停を成立させることができないのであるが、上記認定事実から考えると申立人と相手方とを離婚させその長男勝の親権者をその父である相手方と定めるのが相当であると認められるので調停委員の意見を聞いた上主文のとおり審判する。
(家事審判官 西尾太郎)